ダークパターンの具体例を一覧で確認したい、という声が増えています。2026年9月2日に消費者庁の検討会が中間取りまとめを固め、規制の輪郭がはっきりしてきたからです。この記事では、案が示す3つのカテゴリを軸に、実際の画面でどう現れるかを一覧で整理します。
ダークパターンとは何か|まず定義を押さえる

ダークパターンとは、消費者が本来なら選ばなかったはずの行動を、画面の設計によって誘導する手法のことです。うそを書かなくても成立するのが特徴で、文字を小さくする、ボタンの色に差をつける、必要な情報を折りたたむ、といった「見せ方」だけで判断を曲げてしまいます。担当者本人に悪意がないまま生まれることも多い手法です。
一般社団法人ダークパターン対策協会は、国内の被害額が年間で最大約3兆2千億円に及ぶ可能性があると推計しています。同協会は2025年10月15日から、人をだましていないデザインを認定するNDD認定(Non-Deceptive Design)の運用を始めています。
大切なのは、ダークパターンが「悪質業者だけの話ではない」点です。売上を伸ばす工夫として社内で承認され、A/Bテストの数字が良かったから残っている。そうした画面が、規制の対象として名指しされる可能性が出てきました。
2026年9月2日の中間取りまとめが示した3つの規律対象

2026年8月24日の第8回会合で、ダークパターンをまとめて規制する案が出されました。案の段階では委員から異論が出ましたが、9月2日の第9回会合でとりまとめが済んでいます。案の段階は終わっています。特商法を改正して包括的に規制する、というのが中間取りまとめの方針です。規制の範囲は広告の表示だけにとどまりません。最終確認画面、注文後のアップセル、解約手続きにまで及びます。違反にあたる表示の中身を示すガイドラインは年内に議論をまとめ、関連法案は2027年の通常国会への提出が目指されています。今はまだ「案」の段階ですが、規制の骨格が公的な文書として示された意味は大きいでしょう。
案が想定している規律対象は、大きく3つのカテゴリに整理されています。この3分類が、自社サイトを点検するときの一覧の軸になります。
| カテゴリ | 案が示す内容 | 主に現れる場面 |
|---|---|---|
| (1) 核心的条件の不明瞭表示 | 支払金額・違約金・分量・契約期間などを、一般的な消費者が通常の注意を払っても正確かつ容易に認識できない虚偽・不明瞭な表示 | 広告/申込フォーム/最終確認画面 |
| (2) 取引判断に影響する情報の虚偽表示 | 口コミ、利用状況、在庫情報、タイムセールなどの虚偽表示 | 商品ページ/カート/LP |
| (3) 攻撃的表示 | 操作を繰り返させる、威迫的な文言を使うなどして消費者を困惑・不安にさせ、申込みや締結を迫るUI | ポップアップ/解約フロー/同意画面 |
あわせて押さえておきたいのが、規制の作り方です。法律には一定程度包括的な基準だけを定め、下位法令やガイドラインで「違法なパターン」(ブラックリスト)と適法なパターンを示す方式が想定されています。手口の変化に法改正なしで追随するためです。今の画面が該当しなくても、後からガイドラインで名指しされる可能性は残ります。
類型1|核心的条件の不明瞭表示の具体例一覧

1つ目は、お金と契約に直結する条件が、よく見えないまま申込みに至ってしまう類型です。中間取りまとめは「支払金額・違約金・分量・契約期間など」を核心的条件として挙げ、一般的な消費者が通常の注意を払っても正確かつ容易に認識できない表示を問題にしています。基準が「注意深い人なら気づけるか」ではなく「通常の注意で気づけるか」に置かれている点が重要ですね。
| 具体例 | 該当しやすい画面 | 何が問題になりうるか |
|---|---|---|
| 初回価格を大きく、2回目以降の価格を小さく表示 | LP・商品ページ | 実際の支払総額が容易に認識できない |
| 「回数縛り」や中途解約時の違約金を注記のみで記載 | 申込フォーム | 違約金の条件が不明瞭 |
| お試し購入が自動的に定期購入へ移行する設計 | カート・確認画面 | 契約期間と分量が正確に伝わらない |
| 送料・手数料を最終段階まで出さない | 決済直前 | 支払金額の全体像が見えない |
| 「定期便を申し込む」に初期チェックが入っている | 申込フォーム | 意図しない契約に至るおそれ |
ここで基準になるのが、現行の特定商取引法12条の6が定める最終確認画面です。通信販売で申込みの確定ボタンを押す直前に表示される画面のことで、分量、販売価格・対価、支払時期と方法、引渡・提供時期、申込みの撤回・解除に関する事項、そして申込期間の定めがあるときはその内容を表示することが求められています。この6項目が1画面で読めるか、まず確認してみてください。
なお、これらの例が直ちに違法になるわけではありません。中間取りまとめで指摘されている類型に該当するおそれがある、という段階です。ただ、最終確認画面の規律は現行法に既にありますから、そちらの適合性は今すぐ点検する価値があります。
この類型が実際の画面でどう現れるのかを、数えてみた例があります。2026年9月6日、サブスクや定期購入の通販サイト38件について、法定の表記ページを調べました。
最低継続回数を書いていたサイトは0件でした。解約の締切を書いていたのは3社に1社です。回数の条件そのものは各社の「定期便ガイド」に載っており、隠しているわけではありません。ただ、契約の重い条件ほど、法定の表記から遠い場所に置かれている。類型1が問題にしているのは、まさにこの置き場所です。最終確認画面の表示義務チェックリストに、数え方と全体の割合を書いています。
条件をどこに置くかが処分につながった例が、2026年9月に出ました。消費者庁は9月18日、葬儀サービスを供給する株式会社金宝堂に、景品表示法にもとづく措置命令を出しています。テレビCMで「家族葬 10.45万円~(税込)」と見せていた一方、貸切ホールを使う家族葬を頼むと、ほとんどの場合は30万8,000円以上が必要でした。取引条件を実際より著しく得だと誤認させる表示、つまり有利誤認に当たると判断されています。
この件で注目したいのは、注記の扱われ方です。同社はCMの中に条件を示す注意書きを入れていたと報じられています。それでも、出ていたのは2秒ほどで字も小さく、一般の消費者が読み取るのは難しいと判断されたと伝えられています。上の表にある「注記のみで記載」が、なぜ危ういのか。その理由が形になった例です。消費者庁の公表資料で内容を確かめられます。
類型2|取引判断に影響する情報の虚偽表示の具体例一覧

2つ目は、消費者が「買うかどうか」を決めるときに参照する情報を偽る類型です。中間取りまとめは、口コミ、利用状況、在庫情報、タイムセールなどを例示しています。価格や契約条件そのものではなく、その周辺にある「判断材料」が対象になっている点が特徴です。
| 具体例 | 該当しやすい画面 | 何が問題になりうるか |
|---|---|---|
| 実体のない口コミや、星評価の水増し | レビュー欄 | 口コミの虚偽表示にあたるおそれ |
| 「いま○人が見ています」を実データなしで表示 | 商品詳細 | 利用状況の虚偽表示にあたるおそれ |
| 在庫が十分あるのに「残りわずか」と常時表示 | カート・一覧 | 在庫情報の虚偽表示にあたるおそれ |
| アクセスのたびにリセットされるカウントダウン | LP・バナー | タイムセールの虚偽表示にあたるおそれ |
| 期間限定と書きながら常設になっている割引 | キャンペーンページ | 申込期間の表示と実態の乖離 |
つまずきやすいのが、外部ツールをそのまま入れている場合です。カート離脱防止アプリやレビュー収集サービスの初期設定が、実データではなくダミーの数字を出す仕様になっていることがあります。
点検の考え方はシンプルです。画面に出ている数字に、裏付けとなる実データがあるかどうか。「残り3点」と書くなら在庫が3点であること、「24時間限定」と書くなら24時間後に本当に終わること。この対応が取れない表示は、中間取りまとめが挙げる虚偽表示に該当するおそれがあります。
類型3|攻撃的表示の具体例一覧

3つ目は、消費者を困惑させたり不安にさせたりして、申込みや契約を迫るUIです。中間取りまとめは「操作を繰り返させる」「威迫的な文言を使う」といった手法を挙げています。情報が正確であっても、迫り方が問題になりうる、という整理ですね。
| 具体例 | 該当しやすい画面 | 何が問題になりうるか |
|---|---|---|
| 閉じるボタンが小さい・見つけにくいポップアップ | サイト全域 | 操作の繰り返しを強いるおそれ |
| 断る選択肢が「損をする自分」を宣言させる文言 | メルマガ登録・同意画面 | 困惑・不安を利用した誘導にあたるおそれ |
| 解約を選ぶと引き止め画面が何度も挟まる | 解約フロー | 操作を繰り返させる設計にあたるおそれ |
| 「今やめると全データが消えます」等の強い警告 | 退会確認 | 威迫的な文言に当たるおそれ |
| 同意ボタンだけが目立ち、拒否が判別しにくい配色 | クッキー同意 | 選択の自由が損なわれるおそれ |
「悪意はなかった」という説明だけでは通りにくい場面も考えられます。ポップアップを閉じにくくする、引き止め画面を増やす、といった変更は、離脱率を下げる目的で意図的に行われることが多いためです。
ここまで3つの類型の具体例を並べてきました。では、実際に消費者がいちばん困っているのはどれなのでしょうか。ダークパターン対策協会が2026年8月31日に公開した第4回ホットライン報告レポートに、通報から数えた手口の順位が載っています。対象は2026年5月1日から7月31日までです。
報告された類型は延べ203件でした。最も多いのが「隠された情報」の66件で32.5パーセント、次が「誤解を招く価格表示」29件で14.3パーセント、以下「価格比較困難」23件・11.3パーセント、「隠れた定期購入」21件・10.3パーセント、「解約オプションの非表示・目立たなくさせる」16件・7.9パーセントと続きます。上の一覧のうち、まずどこを見ればよいかを教えてくれる数字です。
順位より参考になるのが、手口の重なり方です。同じレポートでは「隠された情報」と「誤解を招く価格表示」が同時に報告された事例が23件あり、組み合わせとしては最多でした。条件を見つけにくい場所に置き、そのうえで価格の見せ方が実際と違う。この2つがそろうと、利用者は自力では気づけません。一覧を自社に当てはめるときは、項目を1つずつ潰すより、この重なりができていないかを先に確かめるほうが早く進みます。
ひとつ注意があります。この順位は世の中の平均そのものではありません。第4回の112件のうち65件は特定の動画配信サービス1社に集まっており、協会もその点を明記したうえで数字を出しています。あくまで「多い順の目安」として読んでください。
解約フローの具体例と罰則をめぐる現在地
ダークパターンの議論で、いま最も具体的に踏み込まれているのが解約の場面です。中間取りまとめでは、行政処分の対象として次の行為の新設が提言されました。類型の例示ではなく処分対象として挙げられている部分なので、優先度を上げて確認したいところです。
- 解約手続を不当に遅延させる行為
- 契約手続に比べて合理的理由なく過度に複雑な解約手続を課す行為
- 事実確認をせず、返品特約のみを理由に権利がない旨を告げる行為
- レスキュー商法における、表示価格と著しく乖離した高額契約の勧誘
- 契約前に工事等に着手して原状回復を困難にする行為
特に効くのが2つ目の「契約手続に比べて」という比較の視点です。申込みはWebで3分なのに、解約は電話のみで平日日中しかつながらない。この非対称性そのものが問題視される方向で議論されています。自社の申込み導線と解約導線を並べ、所要時間・操作回数・受付チャネルを比べてみてください。
米国のclick-to-cancelルールは2025年半ばに手続き上の理由で裁判所に無効とされましたが、FTCは既存法での取り締まりを続けています。2025年にはAmazonがプライムの解約のしにくさをめぐって25億ドルで和解しました。
気になる罰則ですが、2026年9月2日の中間取りまとめに、具体的な法定刑(罰金額や懲役年数)は書かれていません。広告場面のダークパターンは行政規律による是正を基本とすべきとされ、取消権など民事上の効果の付与は、一般の取引への影響が大きいため慎重に検討すべきと整理されました。直罰に触れているのは、クーリング・オフに関する事業者の行為のうち不実告知や威迫・困惑に該当し得る悪質な行為について、特商法6条の禁止行為への該当性と直罰対象であることを明確化すべき、という部分だけです。
返金の拒否や遅延を罰則の対象にすべきという指摘も出ましたが、単なる債務不履行に刑事罰を科すのは民事法と刑事法の分離との整理が必要だとして、行政処分の対象を明確化する形で対応する整理になりました。法定刑の引き上げは「その他の指摘事項等」で委員の指摘として挙がったにとどまります。適格消費者団体による差止請求の対象とすることも、検討対象に入っています。
ここまで具体例を文章で見てきましたが、実際に触って確かめられる教材もあります。グラフィックデザイナーのトミナガハルキ氏(デザイン事務所AMIX代表)が2026年8月25日に公開した「ダークパターン博物館」です。8つのパビリオンを見て回りながら、だましのUIを体験できる無料のサイトで、課金も会員登録も個人情報の送信もありません。展示を見ていくとスタンプがたまり、最後に「ダークパターン鑑定士」の認定が出るつくりです。
文章で読むより、一度自分で引っかかってみたほうが早く伝わります。自社サイトの担当者やデザイナーに社内で共有する教材としても使えます。個人が運営しているサイトなので今後も公開が続くとは限りませんが、2026年9月5日時点ではダークパターン博物館から入場できます。
よくある質問
Q1. 一覧に載っている表示をしていたら、もう違法なのでしょうか。
A1. いいえ。2026年9月5日時点で出ているのは有識者会議の中間取りまとめであり、政省令もガイドラインもまだ存在しません。この記事で挙げた例は、案が示す3カテゴリに該当するおそれがある類型を整理したものです。ただし最終確認画面は現行の特定商取引法12条の6が既に定めていますので、そちらへの適合は今のうちに確認しておくとよいでしょう。
Q2. どの類型から手をつければよいですか。
A2. 解約フローを先に見ることをおすすめします。中間取りまとめで、解約手続の不当な遅延や、契約手続に比べて合理的理由なく過度に複雑な手続を課す行為が、行政処分の対象として新設を提言されているためです。
Q3. 外部ツールが出している表示も自社の責任になりますか。
A3. 中間取りまとめに、ツール提供者と事業者の責任分担についての明示的な記載は見当たりません。ただ、実際に画面へ表示しているのは自社サイトですから、在庫やカウントダウンの表示に実データの裏付けがあるかどうかは、自社で把握しておきたいところです。
Q4. いつまでに対応すればよいですか。
A4. 違反にあたる表示の中身を示すガイドラインの議論が年内にまとまり、関連法案は2027年の通常国会への提出が目指されています。法律の成立後に下位法令やガイドラインで具体的なブラックリストが示される想定ですから、確定した基準が出るのはさらに先です。ただ、基準が出てから画面を作り直すのでは間に合いません。今のうちに該当箇所を洗い出しておくのが現実的です。
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まとめ|ダークパターンの具体例を一覧で自社に当てはめる
ダークパターンの具体例を一覧で捉えるなら、2026年9月2日の中間取りまとめの3カテゴリが軸になります。核心的条件の不明瞭表示、取引判断に影響する情報の虚偽表示、そして攻撃的表示です。この3つを頭に入れて自社サイトを見直すと、これまで効果的な工夫として扱ってきた画面が、別の意味を帯びて見えてくるはずです。まずは最終確認画面と解約フロー、この2か所から着手してみてください。
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なお、この記事の内容は現時点の案にもとづく整理であり、確定した基準ではありません。
詳細は次の資料をご確認ください。
自社サイトの表示や解約導線について判断に迷う場面があれば、お問い合わせページよりご相談ください。現在の画面を一緒に確認しながら、無理のない優先順位を整理します。
この記事は、Webサイトの表示と解約導線の設計を手がけるアイソル株式会社が作成しています。消費者庁および関係団体の一次資料にあたって確認しました。最終更新: 2026年9月6日。